2017年7月8日(土)、ゆめプラ サロンコンサートに日本ジャズ界トップクラスのピアノトリオがやって来た。

クラッシック系のミュージシャンから公演ごとに高い評価を頂いている響きホールをLive House風に仕立て音響セッティングはアコースティック音を主体に。飲食持ち込み自由アルコールもOK!お客様が心から寛いでLive Jazzをお楽しみいただける会場に。

トリオのメンバーは

ジャズウッドベースプレイの第一人者 井上陽介
エネルギッシュでナイーブなベストドラマー且つ多彩な感性を持つコンフォーザー 江藤良人
明るく軽快なジャズで今後益々活躍が楽しみな地元女性ジャズピアニストのホープ 中嶋美弥

開場時には数十名のお客様が並ばれ既にワクワク感がいっぱいです。

開演10分前。お客様も銘々陣取られ、木台テーブル!に飲み物、片手におつまみで既に寛いでいる方、自販機目指して急がれる方、いつもと違う会場内にどこか落ち着けない方々、開演前の客席からも、何か良い事が始まりそうなそんな期待と予感をかんじます。場内に流れていたエディー・ヒギンスピアノトリオの爽やかなBGMが絞られ、いよいよ開演です。



心地よい緊張感のステージ上に、結構ラフなシャツ姿にスキンヘッドのドラム江藤良人、続いて長身に小粋なソフトのベース井上陽介、最後は可愛らしい膝丈のAラインドレスでピアノ中嶋美弥が登場し、それぞれの楽器にスタンバイします。

メンバーが小さく頷き合ってスタートナンバー ジョージ・ガーシュインのサマータイムの演奏が始まりました、スタンダードでバランスの良いピアノトリオの演奏に聞き覚えのある曲で、客席にも少しホッとした安心感が広がったようでした。

2曲目は井上の最新アルバムGood Time Againにも収録されているアントニオ・カルロス・ジョビンのAqua de beberです。スタート間もなく井上のベースソロからのハイレベルなアドリブプレイが展開され、会場に驚きと喜びの拍手と歓声が沸き上がりました。中嶋のピアノに続く江藤のドラムソロ、このあたりから場内の空気は俄然ライブ会場らしくなってきました。メンバーの表情にも笑顔が見られます。ピアノの音も良く響き始め、ドラムのリズムがそれを心地よく刻み、ベースは自由にスィングしながら更にピアノを導きます。2曲目最後の鍵盤を弾いた中嶋の背中から、スタートの緊張感は消えていました。

中嶋美弥の楽しいメンバー紹介とMCで客席もステージの上も軽く一息

3曲目は江藤良人のオリジナル曲Ka-Baブルース

ゆっ たりとしたブルースの前半から中嶋のピアノ、井上の魅せるソロベース、ドラムパフォーマンスの江藤で会場を沸かせ、後半はやや濃い目のトリオプレーで場内を乗ってこさせてフィニッシュ!

4曲目はハロルド・アーレンのOver the rainbow

親しみのあるこの曲の入りは中嶋のピアノが七夕様のメロディーラインからゆったりと展開していきます、お客様も飲み物をすすめながら、心地よくトリオ演奏の曲の流れに浸って頂けたようでした。

5曲目はジャックス・ジョーンズのyou don’t know me

スローペースのバラードが続き、中嶋のピアノが気持ちよく弾かれ、曲なか場の井上ベースのボウイング奏からは場内を昼間のライブとは思わせず、時の感覚も場所の感覚も奪い、まるでお洒落なジャズクラブにでも居るようなまったり感で包みこみます。

前半ステージの最後6曲目はお客様も良くご存じのスタンダードナンバー ポール・デスモンドのTake five

お客様の耳がかなり“ジャズ耳”になって来たタイミングで中嶋のスタインウェイが良く唄い、江藤は溢れる出る様なドラムソロを聴かせ、井上のベースが小気味よいリズムで曲の最後を締めます。

客席からドオッと満足の拍手が沸き上がりました。

15分間の休憩

後半のステージにメンバーが登場、中嶋美弥は黒いサテンの膝上丈Aラインにお召し替え、カクテルライブの雰囲気を盛り上げます、後半スタートの7曲目は江藤良人のShiroko(白子)

江藤の郷里、鈴鹿市白子町、伊勢湾に面した小さな港町からのイメージを描きます。

井上のベースが住む人々の心を語るように穏やかに響き、浜辺の風景が浮かんで来る。中嶋のピアノは、透けるような陽光にキラキラ輝く海面から高く広がる空に向かって登ってゆく。江藤のドラムは正しいリズムを打ちながらゆっくりと確かな高みを仰いでいく。本当にきれいな曲で、客席の視線が江藤に集まりました!

8曲目ビリー・ストレイホーン A列車に乗って

江藤、井上、中嶋の軽妙で愉快なMCから、江藤のスネアドラム一本による軽快なリズムに乗せて出発したA列車は、実に壮快に場内を走り抜け、客席からの手拍子でさらに加速!楽しい一曲になりました。

9曲目は井上のGood Time Againからボブ・シール・ジョージ・デヴィット・ワイスのwhat a wonderful world

井上陽介の「不安な事の多い今、改めて人々の心に熱い思いを込めてこの曲を届けたい」との前置きがあり、静かなベースソロから入る、ピアノとドラムがそっと脇につく、ベースリードの形で曲は進み、終盤は一音一音にwonderful・world・againの祈りを込めた井上ベースの響きが会場内全ての人々届いて行く。演奏を終えた井上の深いお辞儀と深い吐息、ピアノを弾き終えた中嶋が思わず口にした「わたし、胸がいっぱいになりました」の一言。強く心に残る演奏でした。

10曲目はバリー・ハリスのnascimento

客席参加で手拍子が入ります、皆さんリズム感が素晴らしく、会場全員が共演して、文字通りリズミカルな楽しい一曲となりました。

いよいよ今ステージ最後の11曲目ラストナンバーは、デューク・エリントンのCaravan

小気味よいピアノトリオ演奏。中嶋が渾身のピアノを弾き上げ、江藤のドラムが更に熱を帯びて、ほとばしる様なパワーとスピードを叩き出す!!中盤からは一転して江藤と井上のWパーカセッション?ドラムとカウベルの狂騒曲に、客席からもノリノリの手拍子、さらに中嶋のピアノが加わり、再び軽快なピアノトリオならではの盛り上がりから、一気にフィニッシュへ!場内の割れんばかりの拍車は、すぐにアンコールへのラブコールに変わって行きました。

アンコールは、これも井上のGood Time Againより、バート・バカラックのClose to you“貴方のそばに”

しっとりとしたピアノトリオを聴かせながら、やがて中嶋のピアノが歌いだし軽快に弾む。井上のベースと江藤のドラムが、優しくも確かなリズムとテンポで曲を作り上げていく。そしてフィニッシュはサプライズの「武豊トリオコーラス」!カラテチョプスで鍛え上げた井上、江藤の男声コーラスに中嶋voiceがゲスト参戦し、その場でネーミングされました。とっても楽しいフィナーレでした、最後の曲が終わった瞬間にはブラボー!の声もかかり、スタンディングで拍手される方々もあり、本当に心地よく、楽しく、そして嬉しくなってしまう、生の音楽に触れた感激が客席いっぱいにあふれていました。

三人からの“あなたのそばに”次回へのお約束として聴かせて頂きました。



昼と夜2回の公演で300人近いお客様に楽しんで頂けました。昼公演では、ジャズ音楽は良いなと思うけど、コンサートましてライブハウスに出掛けた事など全くないとおっしゃる方も多く、場内にもそんな初々しい様子があちらこちらで見受けられました。「飲食持ち込み自由」の勝手が分からず戸惑われる方もありました。演奏メンバーの初顔合わせなどもあり(ジャズの世界では日常的)、客席もステージも若干の緊張感の中でのスタートでしたが、プログラムの進行と共にお客様も雰囲気に慣れ、迫力のある生のジャズサウンドと、予想外に楽しい曲の合間のMC、演奏中に楽しめるトップ演奏者の驚くほどハイレベルなパフォーマンスに、肩の力も緩み、笑顔で楽しんで頂いている様子から、場内に漂う新鮮で大きな幸福を感じました。

夜の公演は、響きホールのサロンコンサートファンのお客様とJazz愛好家の面々、いづれ譲らぬ音楽好きな方が多く、昼公演終了時には、すでにホール入り口に御出座しくださった方々もみえました。所謂ライブのノリと言うものは、奏でる側と聴く側が五分五分の責任で造り上げる、その場限りの芸術です、その意味では、夜公演のお客様はご自分の責任を十分に果たされ、望んで余りあるご満足をお持ち帰り頂けたのではないかと思います。トップミュージシャンの持てる技と表現できる音楽を、どこまで引き出せるか、これがトップリスナーを聴く側のセンスと技です。今回の公演をお楽しみ下さったお客様に、ライブハウスのそんな胸躍るようなコミュニケーションを、少しでも実感して頂けましたら幸いです。

by 戸田典昭

おすすめ記事