2020年1月19日(日)、ピアニスト川口成彦さんの公演が行われました。



「ゆめプラサロンコンサート2019」全6回の最後の公演は「遥かなる時代へ~魅惑の古楽器フォルテピアノ~」でした。

演奏者は川口成彦さん。2018年に第1回ショパン国際ピリオド楽器コンクールで世界中から集まったコンテスタントを抑え第2位を受賞された他、海外の大きなコンクールで輝かしい結果を残されているピアニストです。

サロンコンサートのお客さまの関心も高く、チケットは早くに完売となり、追加公演としてコンサート当日の午前中に1時間の「レクチャーコンサート」をしていただきましたが、そちらもあっという間に完売しました。


さて、ここからは川口さんのコンサート内での解説の受け売りです。

フォルテピアノはピリオド楽器と呼ばれる楽器のひとつです。ピリオド楽器とは「当時の楽器」という意味で、現代の楽器とは構造も違い、それぞれの楽器の個性も大きく違います。それだけ弾きこなすのは難しいと言えます。
今回の演奏楽器は、J.G.グレーバー。1820年製です。
ちなみに1820年には、ベートーヴェンが50才、ショパンは10才、シューベルトは23才でした。

ピアノは鍵盤のついた打弦楽器で、1700年頃イタリアのフィレンツェのチェンバロ製作者によって考案されました。その後、色々な技術者によって改良され、
産業革命以降、大きな音が鳴り大量生産できる現代のモダンピアノになります。フォルテピアノとモダンピアノは、弦の張り方、鍵盤の深さ、ペダルの役割り、フレーム等が異なり、それによってもちろん音質や音量も変わります。どちらが優れているというより違いがあるということです。

フォルテピアノの機構はウィーン式とイギリス式があり、グレーバーはウィーン式。
ベートーヴェンもシューベルトも、パリに出ていく前の若きショパンも、ウィーン式のフォルテピアノを演奏していました。
今回のプログラムで、私たちは、偉大な作曲家が当時作曲している時に響かせていた音を、200年後の武豊の地で聴くことになります。


というような解説を交えながらの川口さんの演奏でした。

フォルテピアノの音は温かく多彩で、雑味がありません。
響きホールに美しく響きます。

200年前、世界は現代よりもっと密やかだったでしょう。夜は深く、陽の光はもっと輝いていたでしょう。人々は鳥の声や風の音に耳をすませていたことでしょう。

音は軽やかに私たちを過去に誘います。ベートーヴェンやショパンが演奏していたサロンは、或いはシューベルトが演奏していた友だちの家は、こんな音で満ちていたのではないかしら。

「シューベルト風ワルツ・ツィクルス」の括りでまとめられたショパンのワルツの小品の美しいこと!
ショパンがパリに出ていく前、18才で作曲したソナタ第1番は少し古典的な音がします。
ベートーヴェンのソナタもモダンピアノでいつも聴いている曲とは別の表情を見せます。
ずっと聴いていたい音でした。

演奏している時に時折り見せる川口さんの幸せそうな顔。音楽への愛と喜びがあふれているようです。

とても良い時間をありがとうございました。私たちは、幸せな時間旅行をしたのかもしれません。
              
by ルーシー

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