2021年10月2日(土)に響きホールにて、ゆめプラサロンコンサートが行われました。



「光輝な音色と華麗なる響き~トランペットの醍醐味~」と題して、トランペット奏者・菊本和昭さんがご登場。
実は、この日は、同じくトランペット奏者のセリーナ・オットさんのコンサートを予定していたのですが、海外渡航制限が続いているため、急遽、菊本さんに代替公演をお願いしたところ、快く引き受けてくださいました。
(しかも、セリーナさんと菊本さんは、同じトランペットの先生に師事した同門で兄妹弟子関係だそうです!)


第1部のフリジェシュ・ヒダシュ作曲「幻想曲」は、コンクールのために作曲された難易度の高い曲ですが、トランペットらしい華やかさやかっこ良さがあり、とても聴きごたえのある曲でした。
ラストの音の階段のようなグリッサンドで終わると、客席からは感嘆の唸り声と共に大きな拍手が送られました。
この曲のように、耳馴染みはなくても素晴らしい曲との新たな出会いや発見があるのは、現役のプレイヤーのコンサートを聴きに行く醍醐味だと思っています。


第2部は、作曲者や編曲者のエピソードなど交えながら、菊本さんの実体験の小話も出て、4年前と変わらず、終始楽しいMCでした。
サンサーンス作曲「白鳥」は、チェロの演奏で有名ですが、今回フリューゲルホルンで演奏されました。やわらかい音色と自然なビブラート、菊本さんの堂々として安定した立ち姿は、テノール歌手のアリアを思わせるものでした。
プログラム最後の曲は、アストル・ピアソラ作曲「リベルタンゴ」。こちらも別の楽器・バンドネオンの曲ですが、トランペットに合わせて編曲された特別な1曲とのこと。照明で赤く照らされた背景を背に、お二人の演奏が絡み合い、タンゴを踊る男女のようでした。
最後に向けて曲がどんどん盛り上がり、舞台と客席の高揚感もピークになり、最後の音が放たれた瞬間、客席の前のめりな拍手とともに、菊本さんがガッツボーズをされ、また拍手の音が一段と大きくなりました。



共演のピアニスト・佐竹裕介さんの伴奏は、菊本さんの息遣いや発音にぴったりと寄り添って音を出し、ピアノとトランペットの構造の違いを感じさせない高い技術が素晴らしいなあと思いました。
佐竹さんも、プログラムの中でピアノソロ演奏を披露してくださいました。
前半の「ユモレスク」「夜想曲」は、優しくゆったりして、ふくよかな響きのピアノの音色は、トランペット演奏を聴いた興奮の合間に、気持ちが落ち着くようでした。
また、後半の武満徹作曲「雨の樹 素描Ⅱ~オリヴィエ・メシアンの追憶に~」は、鍵盤の上に落ちる指先が雨だれのようで、とても神秘的でした。



今回のコンサートでは、B♭トランペット、Cトランペット、コルネット、フリューゲルホルンを使い分け、ミュートをつけたり、舞台袖裏から演奏する奏法があったりと、ひとつのコンサートで様々な楽器の音色を楽しむことができました。
選曲も、今年2月に発売されたCDからの曲目はもちろん、人前で披露するのが初めての曲目がほとんどだったそうで、菊本さんにとってもお客様にとっても貴重なコンサートだったのではないでしょうか。
代替公演でしたが、変わらずご来場いただいたお客様からもご好評をいただき、また菊本さんがゆめプラに再々登場する日を楽しみにしたいと思います!

by S.A

本日のプログラム

①カール・ヘーネ/スラヴ幻想曲
②アントニン・ドヴォルザーク/ユモレスク Op.101-7(ピアノソロ)
③フリジェシュ・ヒダシュ/幻想曲
④フレデリック・ショパン/夜想曲 第1番 Op.9-1(ピアノソロ)
⑤クシュトフ・ペンデレツキ/クラウス=ディーター・ルードヴィヒ編
 /トランペット小協奏曲
― 休憩 ―
⑥ジョセフ・トゥリン/奇想曲
⑦ジョセフ・トゥリン/哀歌
⑧/武満徹/雨の樹素描Ⅱ-オリヴィエ・メシアンの追憶に-(ピアノソロ)
⑨カミーユ・サン=サーンス/ミハイル・ナカリャコフ編
 /『動物の謝肉祭』より「白鳥」
⑩アストロ・ピアソラ/井潤昌樹編/リベルタンゴ
アンコール
 ジョン・スティーブンス/秋

おまけ


終演後、舞台裏へ伺い、お二人に少しお話を聞くことが出来たのですが、個人的にとても気になったことをぶつけてみました。
「佐竹さん、手がすごく大きいですよね…?」
長身で手足も長い佐竹さん。客席遠くから見ても、鍵盤の上に広がる手が大きいなと思っていましたが、間近で見たらその指の広がり方にもビックリ。通常でも1オクターブと3音くらい、弾き方を工夫するとド~上のファまで届くそうです。
すごーい!と、思わず写真を撮らせていただきました。(一緒に並べた手は、NPOたけとよ事務局長の手。)


ちらし


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