3月22日(土)サイエンストーク 岩部建設株式会社『壁や柱を大解剖!鉄筋とコンクリートの世界をのぞいてみよう』が開催されました。

開始時刻の15分前、小学5年生の男の子が最初の参加者として、うれしそうな笑顔でやってきました。その後、続々と参加者が集まり、開始時刻前には全員が揃いました。すると、今回のサイエンストークがいつもとは違うことに気がつきました。参加者は小学4年生から70代までと幅広く、好奇心に年齢は関係ないとつくづく思いました。

サイエンストークでは、私たちが日ごろ見えないものや気がつかないものを明らかにして、「見えるように」「気がつくように」してくれたりします。それは、アートやサイエンスの持つ力の一つかもしれません。今回のテーマは「壁や柱の大解剖」。何が見られるのか、みんなの心がウキウキしていました。

最初に、岩部建設の社長の岩部雅人さんから次のような挨拶がありました。


「ビルなどの大きな建物を作るには、一つの会社だけでなくたくさんの人が集まってみんなで協力しなければ作れません。それは、オーケストラが素晴らしい音楽を作り上げるのに似ています。岩部建設はその指揮者のような仕事をしています。今日は完成したら見えなくなるところを見てもらい、見えないところもきちんと作っていることを知ってほしいと思います。」
次に、成瀬専務さんが建設業と会社について紹介しました。建設業には家やビルを作る「建築」と、道路や橋などを作る「土木」があり、岩部建設はその両方の仕事をしている。そして、なんと1926年創業で、あと1年で100年を迎えるとのこと。子どもたちからは「100年はすごーい!」と驚きの声が上がりました。

その後、「建物のお話」では、岩部建設がこれまで作ってきた建物の紹介や、「三匹の子豚」の話を例にした丈夫な建物づくりの工夫についての話がありました。
・一匹目の子豚は早く家を建てたいので、作りやすい「木」で温かい家を建てましたが、強風や火に弱い建物でした。
・二匹目の子豚はもっと丈夫な家を作りたいと思い、鉄を使った家を選びましたが、強いけど、さびないようにちゃんと手入れをしないといけませんでした。
・三匹目の子豚はもっともっと丈夫で大きな建物を作ろうと、鉄筋とコンクリートを組み合わせ、火災に強く長持ちし、地震にも強い建物を建てましたが、建てるのにとても時間がかかりました。

※鉄筋コンクリートの建物の基本構造は、鉄筋コンクリートで柱と梁を作るラーメン構造(ドイツ語で額縁とか枠の意味。食べるラーメンではありません)や、鉄筋コンクリートの壁で建物を支える壁(かべ)式(しき)構(こう)造(ぞう)(かべしきこうぞう)があるそうです。この建物は、材料費が高く壊しにくいという欠点もあるそうです。

また、柱のない「膜構造」(ドーム球場など)、地震対策としての「耐震」「免震」「制震」など、現代の建物の構造についても詳しく解説してくれました。
小学生から「他にはどんな構造がありますか」と質問がありました。
すると、すぐに「東京ドームのような『膜(まく)構造』は柱がないです。地震に強いのは耐震(たいしん)・免震(めんしん)というのもあるし、最近は『制震(せいしん)』というのもあります」と即答でした。さすが専門家!

次に、常務の清水さんが「地面の中で支える構造」や鉄筋コンクリート建物を建てる順について話してくれました。
「地面の中で支える構造」については、一般住宅の場合、「基礎」と呼ばれる部分を柱の下に作り、建物が傾いたり沈んだりしないようにするという説明がありました。
一方、鉄筋コンクリートで作るような大きな建物で支持層が浅い場合は地盤改良工事を行い、深い場合は、地面に杭を打つ「杭基礎」を用いるそうです。この杭は、柔らかい地層の下にある硬い地層に届くように打ち込まれ、場合によっては50m(ビル15階分)もの長さになるとのことでした。
基礎工事が完了するとさらに、建物を下から上へと順に構築していく方法について説明がありました。
1.鉄筋で柱と壁の骨組みを作ってその周りを板で囲んだ型枠の中にコンクリートを流し込んで乾
かす。
2.床の鉄筋を組み、同じように型枠を作りコンクリートを流し込む。
3.次の階層の床の鉄筋を組み、コンクリートを流し込む。

これを下から上へ繰り返して、徐々に高いビルを仕上げていきます。
型枠の工夫により、曲面を持ったデザインのコンクリートもきれいに作ることができるそうです。
また、コンクリートは工場からミキサー車で運ばれますが、タンクをくるくると回し続けることで固まらないようにして現場まで届けられます。現場ではポンプ車を使ってコンクリートを作業場所へ送り込み、均一に行き渡るように作業員が丁寧に流し込みます。型枠に流し込まれたコンクリートは1日ほどで固まりますが、しっかりとした強度にするのには1か月ほどかかるそうです。
お話の後には以下の体験をしました。

① コンクリートの練り体験


砂(川砂。海砂では塩分があるので適さない)、砂利、セメントを混ぜ合わせます。そこに水を適量入れてさらによく混ぜ均一にします。それほど多くの量でないのですが、水を入れると急に重くなり、かき混ぜるのが大変でした。子どもも大人も苦労しました。

② 鉄筋を結び付ける「結束」の体験


見本として、実際の柱に使用される鉄筋が用意されていました。その高さはおよそ2メートルで、見るからに頑丈そうなものでした。「これが大きなビルの柱の中に入っているのか」とびっくりしていました。
さらに感心したのは、岩部建設さんの協力会社の職人さんが何本もある鉄筋を一本一本、早く正確に結束していく実演です。


実演後は、職人さんに教えてもらいながら参加者がハッカーという道具を使って実際に鉄筋を結束してみました。軍手とゴーグルをつけて安全に作業を進めます。
見ていると簡単そうに見える作業でしたが、いざやってみると思うように道具が扱えず、上手に結束するのは大変でした。ハッカーを回しすぎて「結束線」と呼ばれる細い針金を切ってしまい、やり直す場面もありました。それでも挑戦を続け、皆がもっと上達したいと思っていました。

③ モルタルで自分の手形作り


用意してくれた木枠に、職人さんが事前に練ってくれたモルタル(セメントと砂を水で混ぜたもので、砂利が入っていないもの)を入れます。そして、コテできれいに伸ばして平らにしてから手袋をした手のひらをグーと押し当てて手形を作りました。押さえ方が弱いと手形ができず、強く抑えすぎても手形が崩れてしまい、なかなか力加減が難しかったようです。乾くまでゆめプラで預かっています。記念品として、後日みなさんにお渡しします。

講座を終えて、アンケートにも満足の声がたくさんありました。

「壁がどうやってできているかわかった。(小4)」
「骨組み、壁や柱に関するお話が分かりやすかったです。(小4)」
「分かりやすい説明で、自分はこの講座をとても気に入りました。まことにありがとうございます。(小5)」
「家の構造が知れてとてもよかった。ふだんは見えない所も見えてとても興味深かった。(小6)」
「家の作り方には、さまざまなものがあり、それぞれに特徴があることが分かった。コンクリートも奥が深く、とてもおもしろかった。(中2)」
「簡単そうに見えることでも、意外と難しいもんですね。子どもたちと一緒で楽しかったです。(一般)」

今回も担当してくれた企業さんのご努力、ご配慮で有意義で楽しいサイエンストークになりました。
心より感謝いたします。

By MASAMASA

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