2012年8月9日(木)、「子供のためのシェイクスピア『ヘンリー六世 』」が行われました。

開演15分前。
出演者イエローヘルメッツによる生歌の披露という、お約束のサービスから始まった「子供のためのシェイクスピア『ヘンリー六世 第三部』」。
子供には、たぶん初耳の懐メロ(私も知らない曲)ですが、
ヘルメッツの面々がちょっぴり恥じらいながらステップを踏む姿がかわいらしくて、見ていてほんわかした気分になります

ところが、開演と同時に雰囲気は一変。
もくもくと焚かれたスモークの中から画のように浮びあがってくる人たちが、それぞれ自分の欲望や嘆きを吐き出し始めます。
「ヘンリー六世」第三部ということで、物語はいきなり佳境に入っているのですね
すでに戦闘モード、そして常に戦闘モード!



けれども、自分の正統性を必死に言い合う場面に、客席は大笑いです
後継者問題が「高崎山のボス猿」に例えられたり、四男坊vs五男坊が「ヤン坊マー坊」に変わっちゃったり、
英国の小難しい血族争いが、ぐっと身近で下世話なものに感じられてくるから不思議です。
後半では、エドワード兄貴ったらステテコ姿ですもん(笑)
子供のためのシェイクスピアの魅力の一つは、ここにあるのだと思います

そして、もう一つの魅力は役者さんたちの殺陣がかっこいいこと!
薄暗い中に木の机だけが置かれている舞台で、衣装のドレスが翻り、剣がぶつかり合う迫力ときたら!
観客も思わず息を呑んで見入ってしまいます
あのフワフワヒラヒラした衣装で、よく机を飛び越え舞台を走り回れるなぁ(感嘆)


『ヘンリー六世』は残酷な物語です。
舞台上では多くの血が流れ、子供も容赦なく殺されます。
ヨーク公もマーガレット王妃も、我が子のために奮闘し、我が子の死を嘆き悲しむ。
従う貴族たちの原動力も、肉親を殺された“怒り”です。
それなのに、ヘンリー六世とリチャード三世の二人だけは別の次元で生きている。
自分が権力を手にするために、残虐の限りを尽くすと宣言するリチャードと、
争いに心を痛めつつも、現実逃避ばかりで何も行動を起こさないヘンリーと、
真逆なようで、どちらも今の自分に夢中で次世代を考えていない点では似た者同士。
草食系を気取ったヘンリーも、充分に残酷な王だと感じました
ヘンリー六世って今の日本を象徴している気がする……

by サラダ


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